ブログ担当の、通関士/EPA関税認定アドバイザーの中川です。
日々の業務や、経験したことを通して、”通関””貿易”の世界を、分かりやすく紹介したいと思います。
堅苦しいイメージから、もっと身近で、興味をもってもらえればと思います。
奥深い通関・貿易の世界。その沼に皆さんもハマりますよ。
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2025年12月25日(木)
コラム大森
コラム大森 :「身近なモノ」に想うこと
時計写真


EPAやRCEPといった実務的な話の前に、ひと休み。
今回は私の好きな「機械式腕時計」を例に、ニッチな視点でお話ししたいと思います。

多くの時計好きがそうであるように、私は買えもしないのに、動画など見て、これがいい!これを腕にしたらテンション上がる!と妄想しています。
私が20代の頃(30年くらい前)、ロレックスやオメガは頑張れば、それでも手の届く存在でした。
コロナ禍以降、高級時計全般の価格高騰が止まりません。背景には様々な要因があると思います。

原材料費や人件費の高騰
・ケース素材の金など、貴金属の価格上昇。
・ギョシェ加工等、高度な技術をもつ職人確保の為の人件費アップ。及び育成コストの増加。

歴史的な円安・スイスフラン高
・スイス製の高級時計の場合、スイスフランに対する円安の影響が非常に大きく、日本国内での値上げに直結しています。

ブランド戦略
・人気ブランドでは、需要が供給を圧倒しており、ブランド価値維持のための戦略的な値上げも行われています。

私は専門家ではありませんが、個人的に調べてみた結果、これらの理由があるようです。


関税の影響は「ゼロ」?

職業柄、「これだけ値上がりして、関税分も値段に反映されているのか?」と疑問に思いました。
けど日スイスEPAがあるよな。とも思い、調べました。
実は腕時計は関税分類(HSコード91類)において、協定税率がFREE(0%)なのです。
トランプ関税の記事で述べましたが、関税は、国内産業を守る意図もあります。
自動車もそうですが、国内産業が強いものは関税FREEなのかな。と思いました。
しかし、よくよく調べるとそうでもないのです。
腕時計が無税品目である背景には、WTO(世界貿易機関)の前身GATTの国際的な関税交渉の歴史があります。
1970年代後半の東京ラウンドにおいて、主要先進国間で鉱工業品の関税撤廃・大幅削減が進められ、
日本もこれに倣い多くの品目で関税を撤廃しました。
これは国内産業保護というより、自由貿易体制に基づく措置です。
輸入している腕時計については、関税は価格上昇には関係なかったのですね。


革靴やバックを購入する時も、イタリア製と日本製、価格だけで比較するとどちらがコスパが良いか。
関税の事を知ると判断材料の1つになるかもしません(こちらは有税です)。
ニッチな視点ですが、関税は意外と身近なものですよね。
今回、関税分類など、聞きなれない言葉がでましたが、後々ご説明します。
次回こそ、企業がこのEPAやRCEPといった制度をどう使って、どんなメリットがあるのか、掘り下げてみます。お楽しみに!


2025年12月11日(木)
通関士ニュース
関税をもっと身近に。「ゼロ」にする仕組みってあるの?
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関税をもっと身近に。「ゼロ」にする仕組みってあるの?
前回は「トランプ関税」の話をしました。自国産業保護の為に、関税を利用する政策です。
ただ世界には逆の政策もあります。「関税をゼロ(もしくは減額)にする政策」です。
具体的には、”EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)”と呼ばれるものです。
これは単に関税を下げるだけではなく、国もしくは地域(EU、アセアン等)同士が「もっと仲良く経済活動しましょう!」っていう幅広いルールなんです。

日本と中国は大切な貿易パートナー
最近の政治的なニュースとは裏腹に、日本と中国の経済的なつながりって、実はとても深いんです。
日本にとって、中国は最大の貿易パートナーです。

最新データ(2024年): 
日本の貿易全体のうち、中国とのやり取りが占める割合はなんと約20%!
日本からは主に、半導体の製造装置や電子部品を輸出し、中国からは電化製品や衣料品などを多く輸入しています。
日本と中国は、お互いの経済活動に欠かせない存在で、どちらかが欠けたら困る、そんな関係がデータからも分かります。
※ 出典:外部省ホームページ ”日中経済関係・中国経済 令和7年6月25日 記事中 基礎資料より https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page3_000307.html

アジア全体がチームになる「RCEP」
この強い結びつきを、さらにアジア全体に広げようというのが、RCEP(地域的な包括的経済連携)協定です(2022年1月1日より発効)。

世界最大の経済圏: 
この協定、実にすごい協定で、世界の人口の約半分、GDPの約3割をカバーする、とてつもなく大きな自由貿易圏が誕生したんです。
※ 出典: ASEAN公式、ADB報告、Wikipediaによると、RCEPは世界人口の約30%(約2.3億人)、世界GDPの約30%をカバーする最大級の自由貿易圏。

日本にとってのメリット: 
特に日本は、これまで貿易協定がなかった中国や韓国と初めてEPAを結ぶことになるので、関税が下がるインパクトは大きいんです。
政府の試算では、RCEPのおかげで日本のGDPが約2.7%も押し上げられる可能性があるって話もあります。
この分析は、令和3年(2021年)の政府分析なので、現在その効果は、もっと高くなっていると予測されます。
※ 出典:RCEP協定の経済効果分析 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100162437.pdf

サプライチェーンの効率化
原産地規則の統一により、アジア域内での部品調達や製造がスムーズになり、企業のコスト削減と競争力強化につながっています。

まとめ:
EPAやRCEPの枠組みを活用することで、より良い経済環境を築けます。
関税の引き下げやサプライチェーンの効率化は、企業や消費者に新たなチャンスをもたらします。
次回は、企業がこのEPAやRCEPといった制度をどう使って、どんなメリットがあるのか、掘り下げてみます。お楽しみに!



2025年12月01日(月)
通関士ニュース
トランプ関税って何?~関税が物価に与える影響を知ろう
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前回の記事で、輸出入には税関の検査と許可が必要だとお話しました。(関税法第67条)
輸入の場合は、関税と消費税を納付してから許可が出ます。(関税法第72条)

この「関税」、実は世界の経済を動かす大きな仕組みでもあります。

関税って誰が払う?

関税は、輸入品にかかる税金です。
払うのは輸入する企業(輸入者)です。輸出には関税はかかりません。
つまり、海外からモノを買う(輸入する)ときだけ発生します。

トランプ関税とは?

アメリカが中国などからの輸入品に、高い関税をかけた政策です。
目的は「海外製品の関税を高くして、国内産業を守る」ことです。

結果、何が起きる?

関税を払うのは輸入企業なので、そのコストは商品価格に転嫁されると考えられます。
結果として、以下のような影響が予測されます。(アメリカ国内)
・輸入企業のコスト増
・価格転嫁による、国内物価の上昇
・原材料を輸入するメーカーへの打撃

つまり、守られる産業もあれば、負担が増える産業もある。
関税は「税金」という意味あいだけでなく、物価や生活に直結する仕組みでもあります。

※ちょっと最新情報(2025年11月28日時点)
・トランプ米大統領は現在、関税収入を財源に、今後数年間で米国の所得税を大幅に削減する意向を表明しています。
・特定の農産品(コーヒーや牛肉など)については、米国内の物価上昇を抑えるため、相互関税の対象外とする大統領令を発表しました。
これにより、関税政策が物価に与える影響を調整しようとする動きが見られます。
・米サンフランシスコ連邦準備銀行の分析では、関税導入後3年で物価上昇がピークを迎え、その後失業率も悪化したものの、改善へと向かう見通しが示されています。

まとめ
トランプ関税は、国内産業を守る狙いがありましたが、同時に物価上昇という副作用も。
現在も政策の調整が続いており、良い方向に向かうかもしれません。サプライチェーンへの影響なども注視されています。
次回は、逆に「関税をゼロ(もしくは減額)にする仕組み」――EPA(経済連携協定)について解説します。


2025年11月21日(金)
通関士ニュース
輸出入の許可って何?~税関検査やルールの話~
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日本では、貨物を輸出入する際に必ず税関に申告し、検査を経なればいけません。
(これは"関税法第67条"で定められています。)
つまり、国境を越える前に「法律やルールに沿って問題ないか」を確認する仕組みです。

輸入許可の条件
輸入の場合、税関の検査を受けるだけでは終わりません。
関税や輸入消費税を納付してから、税関の「許可」が出ます。
(これは"関税法第72条"で定められています。)
この許可が出ると、貨物は国内で流通できるようになります。

輸出許可の条件
輸出も同様に、税関の検査を受けて「許可」が必要です。
ただし、輸出には関税はかかりません。ここが輸入との大きな違いです。

なぜこんな仕組み?
国境を超えるには、ルールがあります。
食品なら安全基準、ブランド品なら偽物チェック、さらに輸出入規制や安全保障の観点も。
このルールを守ることで、国内の安全と国際的な信頼が保たれます。

※税関がタッチする法令の他に、他の省庁の確認が必要な場合があります。
それらの法令を”他法令(たほうれい)”と呼びます。

ここから広がる話
関税は単なる税金ではなく、経済を動かす仕組みです。
例えば、アメリカが導入した「トランプ関税」は、輸入品に高い税率をかけることで国内産業を守ろうとしました。
でも、その結果、輸入企業のコスト増→商品価格の上昇→国内の物価上昇という副作用も起きています。

まとめ
輸出入の許可は、国境を越えるためのスタートライン。
そして、関税は世界の経済を左右する大きな仕組み。
次回は、この「関税」とは何か──トランプ関税の本当の意味をわかりやすく解説します。


2025年10月30日(木)
通関って、何をしているの?~貿易の舞台裏~
みなさんは、海外旅行で免税店を利用したことありますか?
「免税」って聞くとちょっと得した気分ですよね。
けど、企業の輸出入にはもっと複雑なルールがあります。
そこで登場するのが 通関です。

通関って何?
簡単に言えば、モノが国境を越えるときに「OK=許可」をもらう手続きです。
輸入なら「日本に入れていい?」、輸出なら「海外に出していい?」を税関に確認します。

なぜ必要?
関税や輸出入規制があるからです。
食品なら安全基準、ブランド品なら本物か偽物か。
通関士は、こうしたルールをクリアするために書類を整え、税金を計算し、税関とやり取りします。
税関が国の関所なら、通関士は関所で通行許可を取り付ける専門家といえます。

難しそう?
複雑だけど、基本はシンプル。
ルールを守って、正しく申告すること。
通関の世界を知ると、ニュースで見る「輸入規制」や「トランプ関税」がグッと身近になりますよ。

まとめ
通関は、世界と日本をつなぐ大事な仕事。
あなたもこの舞台裏、覗いてみませんか?